2011年6月1日水曜日

天童荒太 著「悼む人 上・下巻」読了

「その人は、誰に愛されたのでしょうか。誰を愛していたのでしょう。どんなことをして、人に感謝されたことがあったでしょうか」
自殺、他殺、事故死、虐待死・・・あらゆる死者を唯一無二の存在として胸に刻み込む為、放浪の旅を続ける主人公。分け隔てる事なく全人を平等に悼む彼の行為は「偽善」なのか「宗教」なのか?

 

天童荒太 著「悼む人」
4日ほどで上下巻を一気読み。久しぶりに「この先を早く読みたい!」と思わせてくれた 素晴らしい作品でした。

直接的にそのまま「死」がテーマの「重たい」内容です。最初から最後まで、延々と「死」の話が続いていきます。

現実にもワイドショーでは連日のように事件、事故がドラマのように報道され、被害者の事を「可哀そう」と涙し「犯人を許せない!」と感情を揺さぶられます。
しかし、1ヶ月もしたら、次のニュースへ、次の事件へと心は移ってしまいます。人間は、それぐらいドライにならなければ生きていけないのかもしれません。

また、身内や大切な人の「死」に直面した時、人は「この気持をずっと忘れない、忘れられない」と悲しみに暮れます。
それでも私たちは、生きていかなければなりません。毎日毎日・・・どんな瞬間も・・・その故人を心に映しながら生きていくことは無理なのです。そう・・忘れて生きていくのです。


個人個人の「死生観」に問いかける小説ですので、「好き嫌い」はあるのかも知れません。

主人公のその「行為」に強く共感できた私にとっては「心に深くしみる」一冊、いつの日か 再読したいと思わせてくれる素晴らしい作品でした。


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